こんにちは、予防歯科とインプラント・審美歯科で大切な歯を守る愛媛県松山市余戸伊藤歯科医院、院長伊藤泰司です。
今日は、歯科医師会で「一般開業医が取り組む顎関節症の診断と治療」という演題で大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再健顎講座 矢谷博文教授にご講演いただきました。
矢谷先生はわが母校広島大学歯学部とかかわりがあり、私が学生であったころ広島大学歯学部附属病院第二補綴科助手をされていました。
そんなわけで今回矢谷先生が講演されるとお聞きして、懐かしさと教授になられた先生のご様子を窺い知れて嬉しく思いました。
今日、顎関節症に対する治療方法も症状に応じて治療法を選択していくという流れになってきました。
保存療法,非侵襲的療法、可逆的療法といった治療を重視するという考え方に次第になってきています。
顎関節症は、身体的な因子と心理的な因子その両軸で捉えることが大切であると矢谷先生は力説していました。
我々が大学時代に習った考え方とは異なり、顎関節症は病態の異なるいくつかの包括的疾患であるため,画一的な治療は避けねばなりません。
また、患者様個々の程度の差はありますが、社会心理学的要因に関わる問題点も数多く見受けられます。
そのため患者様の問診や質問表は極めて重要な要素となってきます。
更に顎関節症は基本的には症状は自然消退する疾患であるため、補綴・矯正による加療が逆に疾患の治癒を遅らせる結果となることも考えられます。
治療のゴールは疼痛が消失していて、日常生活に支障がなく、40mm以上無理なく開口できること。何でも咀嚼できて、口腔内の習癖がコントロールされていることを目安とします。
実際の治療は顎関節の特殊性を考慮して可能な限り非侵襲定的、保存的、可逆的療法を選択することが原則です。
生活習慣の改善、ストレスの軽減、睡眠習慣等の患者指導、薬物療法、開口訓練等の物理療法、スプリント等のアプライアンス療法が今後開業医に出来るおもな治療内容となってきます。
最後に「医師が患者の疾患に対応するときには、過去、現在、将来を勘案し、二つの重要な目的、すなわち患者にとって利益となること、決して患者に害を与えないことを確認すべきである(Hippocrates)」この言葉を肝に銘じて顎関節症の治療にあたらねばならないと矢谷先生は述べられていました。
今日の講演を聴講し顎関節に対する新しい流れ、開業医として手を出してはいけない症例、取り組むべき症例が分かり本当に有意義な時間を過ごせました。
矢谷先生有難うございました。