こんにちは、広報・受付担当トガワです。
高齢者は加齢だけでなく、疾患や障害などさまざまな要因によって口腔機能が障害されやすい状態にあります。
口腔機能が障害されると、口からの栄養摂取への悪影響が懸念されますが、これまで口腔機能低下と栄養状態の悪化との関係についてはまだ不明な点が多いと言われていました。
そこで、研究への同意が得られた入院患者約300名に、口腔機能、口腔衛生に関する調査を行ったそうです。
その結果低栄養群では、多くの口腔機能の計測値が低下していることがわかりました。
とくに、舌圧や咬合力など筋力系の項目でその傾向が強かったそうです。
また、加齢による影響をみてみると、高齢者では64歳以下の若年者と比べて、多くの口腔機能の項目が低下していこともあきらかとなりました。
この調査により、入院高齢患者の低栄養は多くの口腔機能の低下と関連していることがあきらかになり、栄養を指標として口腔機能低下を評価することの意義が示唆されました。
口腔機能低下症とは、口腔機能が完全に障害される前段階に位置します。
口腔機能低下症の診断基準として、今までご紹介してきた
1.口腔不潔
2.口腔乾燥
3.咬合力低下
4.舌口唇運動機能低下
5.低舌圧
6.咀嚼機能低下
7.嚥下機能低下
の7つの項目のうち3項目以上が該当したときに口腔機能低下症としました。
口腔機能低下症は、むし歯や欠損などの今までの器質的な障害とは異なり、”機能”の低下を病名としたこと、そして口腔機能低下の帰結因子として、栄養やフレイルといった高齢者の全身状態に関連した事象を考慮するという、超高齢化社会における歯科の2つのパラダイムシフトを表しているそうです。
フレイルや要介護の高齢者では、口腔内に器質的な問題がなくても、咀嚼嚥下に問題が生じたり、栄養状態が不良であったり、肺炎を繰り返したりすることがあります。
このような高齢者の口腔機能はあきらかに低下していることがわかっていましたが、その状態、病態を適切に表現する歯科病名が今までありませんでした。
そこで、口腔環境の複合的な機能低下である「口腔機能低下症」という病名が必要だったのです。
口腔機能低下症を放置していると、いずれ口から食べることが不自由になり、栄養不良やフレイルに陥ってしまう危険性があります。
口腔機能の低下から低栄養、フレイルへと入っていく流れを、歯科領域で早期の段階で発見し、早期の対応することが可能になれば、歯科によるフレイル予防、栄養促進を進めることができるのです。