治療

訪問診療奮闘録

こんにちは、松山市伊藤歯科の院長伊藤です。

毎月一度は義歯のお手入れと様子を伺いに訪問診療をしている患者様(S子さん)がいます。スタッフと行くと必ずS子さんの可愛がっているコリーが出迎えてくれます。
いつもヘルパーさんと時間を合わせて頂いてますから、S子さんのベッドの上げ下げは大変楽でした。
訪問診療奮闘録-01
「最近おばあちゃんの上の義歯がよく落ちて食べにくそう。食事の量も減ってきたんですよ」と枕元で娘様が心配そうに言われた。見ると確かに以前より痩せたS子さんの姿が・・でもしっかりと私の手を握りしめ とてもお元気そうで安心しました。落ちる義歯の内面をよく観察してみると 家族の方がつけたであろう市販のタフグリップなるものがまだらに義歯に張り付いていました。これでは義歯の安定は望めないので、これからは市販の入れ歯安定剤は急を要する時以外は使用しないことを伝えました。

訪問診療奮闘録-02
歯の内面を一層削りそこにリベース剤(歯科用の安定剤のこと)を入れて様子を見ることにしました。義歯の後縁も伸ばしたのでかなり良く吸着するようになりました。ヘルパーさんもそのくっつき方にビックリしていました。それから衛生士により口腔内の刷掃をしました。もちろん舌の清掃も大切です。カンジダ菌は誤嚥することによりさまざまな病気を起こしていきます。最後は冷たくしたクルリン棒で喉の奥を刺激して嚥下を誘導します。寝たきり状態のS子さんですが、こうしてヘルパーさんをはじめ、娘様の心配りでいつも口腔内を清潔に保たれていることに感心させられます。われわれ歯科医やスタッフはそのお手伝いをしているだけですから・・
訪問診療をしていると患者様の喜んでいただく顔を直に見れることが何より一番嬉しいことです。娘様からもとても感謝されて治療は終了しました。
あとで分かったことですが、あれから1ヶ月してS子さんの訃報を知りました。あの時のS子さんの最高の笑顔を今でも忘れられません。ゆっくりと休んでください。ご冥福をお祈りいたします。

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