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舌診

みなさん、こんにちは。伊藤歯科医院です。

先日、「舌診」についての講習を受けたので、その内容を少しご紹介したいと思います。

舌は、全身状態の変化が現れやすいことから、全身の鏡といわれ、舌を診ることで体内の状態を知ることを『舌診』といい、東洋医学や漢方医学において最も重要とされてきました。

舌診は主に以下のような項目を診ていきます。

舌体(舌質)
色調
舌の色が薄い場合は血液が薄く、逆に赤色度が高い場合は、脱水による血液濃縮や循環不良の場合が多い。

形態
(1)胖大(はんだい)…舌がはれぼったい感じの状態で,体内に水分が停滞しやすく、細胞も水に浸っている場合に見られる。
(2)歯痕(しこん)…舌の辺縁部に歯による圧迫痕が見られる状態で、細胞内外に水分が停滞しており、唾液の粘性が亢進していることが多い。一方、舌先端部分に見られる歯痕は,ストレスや緊張などによる舌の押し当ての習慣がある場合に良く見られる。
(3)溝状舌…血液の栄養不足や体液や水分の流れが阻止された場合に見られる。
(4)平滑舌…舌面に苔がなく、乳頭が消失して光ったように見える。深紅色で光滑な場合は、血液成分の不足や体液の不足、循環不全であることを示す。
(5)点状の隆起、斑点…内部の毛細血管の鬱血や循環不全の場合には赤褐色に、舌乳頭の表面が角化した場合は白色に、色素沈着が生じた場合は、黒色に見える。点状で紅い隆起はいずれも熱性の病変などが進行して盛んになった場合などで見られる。
(6)瘀点(おてん)、鬱血斑…舌表面に見られる青紫~紫黒色の斑点で、気力やエネルギーの滞りや血液の鬱血,循環不全などで見られる。
(7)先端部の発赤…舌先端部が他の部分よりも赤く変化している場合で、咽喉頭部の循環障害などの影響が現れている状態と思われる。

舌 苔

舌苔の量
糸状乳頭には剥離細胞や粘液,食べかすや細菌などが付着して舌苔になる。糸状乳頭部分の栄養血管に糖分やタンパク質が多くなりすぎると、舌粘膜の上皮の角化が亢進して糸状乳頭が長くなり、老廃物などが積み重なると舌苔が厚くなる。
(1)薄い苔…正常舌では糸状乳頭が短く、ごく薄い苔が全体を均等に覆っているように見え、苔を通して舌本体が見える。病気の状態で、見られる薄い苔は軽症の場合が多い。
(2)厚い苔…舌本体が全く見えないぐらいの厚い苔は、胃腸系の障害があると変性細胞の脱落が活発でなくなるため,これに雑菌などが増殖して白色や黄色の苔を形成する
(3)無苔…全く苔がない無苔は異常であり、栄養不良による舌粘膜表面の乳頭萎縮が生じている場合である。

苔の状態
(1)苔の分布…苔のある部分とない部分が地図のように見える地図状舌は、心因性疾患と関連してみられることが多く、ストレスに対する抵抗力低下などによる舌根部や咽喉頭部の血流障害などとも関連すると思われる。
(2)湿潤と乾燥…苔が水分を多く含んだ状態は,体液の停滞や新陳代謝の低下などで見られる。一方、乾燥している苔は、体液不足で症状が重い場合が多い。

舌苔の色調
舌苔の色調は発熱や水分代謝の状況と関連し,舌苔内細菌の影響による舌苔色と関連する。
(1)白苔…ごく薄い白苔は正常苔とされている。糸状乳頭の先端部は角化すると伸長して,唾液に浸ると水分により白く見える。細菌叢も正常細菌叢に近い状態である。厚い白苔は,糸状乳頭の角化が亢進して増加した状態で,機械的摩擦の減少,脱水や唾液分泌減少による自浄作用低下の場合である。
湿った感じで厚い白苔は,糸状乳頭の枝と分枝が増加して粘液腐敗物や脱落した上皮細胞などが存在する場合で,消化管機能障害と関連がある
(2)黄色苔…炎症性の感染や発熱による水分不足、胃腸機能の乱れと関連する。喫煙本数の増加や慢性胃炎、小腸の吸収不良などでも形成される。
(3)黒苔…高熱や脱水、炎症性疾患、感染、産色微生物の増加、唾液 pH の変化と関連する。


舌下部静脈
両側に1本ずつで、舌の5分の3程度の長さ、色は暗赤色で、枝分かれや拡大、結節、湾曲のない柔軟な状態を正常と考える。
枝分かれや拡大などがある場合は,血液循環の滞りや体液の滞りが生じている場合で、肝機能障害や静脈内圧上昇,高血圧,右心不全などで多く見られる。

舌診は、特別な器具を必要とせず全身状態を反映していることから、特に舌を見る機会の多い歯科臨床では、全身状態を知る有益な情報収集方法といえます。

医科と連携することで、予防医学においても有益と考えられ、病気の状態を把握するための所見の一つとして理解することで、症状を緩和する糸口になります。

また、西洋医学的な対応や漢方医学的な対応の利点を組み合わせることで、患者の症状改善と QOL 向上に寄与できると考えられます。

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