こんにちは、予防歯科とインプラント・審美歯科で大切な歯を守る愛媛県松山市余戸伊藤歯科医院、院長伊藤泰司です。
先月は久々に患者K様より自宅での診療の要請があり、診療の都合を見てスタッフと訪問歯科診療をしました。
事前の電話により、歯牙が折れて下の義歯の安定がよくないとヘルパーさんより言われていましたので、それに応じる準備を整えて出発しました。
診ると左下の犬歯が歯折しています。パーキンソン氏病のK 様のお体の様子を鑑みれば抜歯はかなり疲労と苦痛を伴うと判断して、その歯を平に削合して、メタルで被いその1本隣の前歯にクラスプ(金属の留め金のこと)をつける計画を立てました。
メタルとクラスプが出来上がり早速K様のお宅に伺い、歯を金属で被せ義歯のクラスプの修理をしました。「これで暫く使ってみてね」と言い残して経過を見ていくことにしました。
数日後、その後の様子を伺うと、あまり調子がよくなくてK様浮かぬ顔をしていました。
どうしたものかと診てみると、クラスプが前歯にかかるものだから、どうしても口唇や舌に痛くは無いけど違和感があるとのことです。パーキンソン氏病のK様にとって今までと異なる環境(口腔環境も含めて)はかなり苦痛に感じられるようです。
こればかりは困ったもので、保険治療の限界かと説明してご納得をしていただくことにしました。
K様と付き添いの娘様の希望で少しお金かかってもいいからもっと違和感が無く、体裁もいいのは無いものかと相談を受けたため、自費治療になりますが、磁石を使って義歯を固定する計画を立てました。
後日、衛生士、技工士、助手と私の4人でK様のお宅に伺い、型を取り、磁石の埋め込み準備をします。
技工士さんの助言がよかったので磁石は首尾よく義歯に固定されて、クラスプの無い義歯の修理が完成しました。
以前の義歯と異なりクラスプも無くなり口唇を圧迫することが無く違和感も嘘のように無くなったとのことです。
K様とその付き添いの娘様の喜びようは計り知れませんでした。
結局、保険治療から自費治療へとそのメリットを最大限に生かして治療してきたつもりですが、やはり素材やシステムの良し悪しにはかないませんでした。
いい素材、いいシステムが程好く保険治療に導入されてくると患者様の恩恵は計り知れないものがあります。
しかしながら、昨今の景気低迷を考慮すると何でも保険導入は返って日本経済、国民医療費の膨大を助長して逆に国民の医療費保険料の負担増大にもなりかねません。
本当に難しい選択だと思います。
今年の4月の保険改正では果たしたどのような制度変更、保険点数変更があるのだろうか?
本当に国民のための医療費の分配を考えてもらいたいものです。