こんにちは、広報・受付担当トガワです。
ライフコース疫学により、病気について発症機序が明らかになり、発症前のリスク発見が重要となってきています。
生活習慣病に対する組織的なヘルスケアは、現在は40歳を過ぎてからの特定健診や保健指導ですが、本当は学齢期や青年期を含むライフコースでのヘルスケアを考えなければ防ぐことはできないという考えがでてきました。
たとえば、低体重状態で出生した子どもは、成長後に生活習慣病になる割合が多いことが報告されていることが挙げられます。
低体重の要因として、胎生期の母親の低栄養状態が指摘されています。
痩せ気味の妊婦さんが低出生体重児を産むリスクは、普通体重の妊婦さんの1.64倍だそうです。
胎生期に母親の低栄養状態という環境に曝された胎児は、出生後の低栄養環境に耐えられるように染色体遺伝子が胎内でプログラミングされます。
ところが、出生後は胎内環境とは異なり豊かな食生活環境があり、そこで成長すると、低栄養環境に対応した遺伝子プログラミングが実際の豊かな環境と乖離が生じて、適応障害が起こり生活習慣病に罹りやすくなると考えられています。
これに対して、母親が十分な栄養をとっていれば胎児は豊かな栄養状態の環境に適応でき、生活習慣病を回避できると考えられました。
このような概念をドハド学説といいます。
ドハド学説は、栄養・運動・休養による適正体重の維持とストレス回避の重要性の根拠となっています。
胎児期の母体の環境や栄養状態は染色体遺伝子に何らかの形で記憶されているということを、胎児プログラミング仮説といいます。
胎児だけでなく、乳幼児期、さらに学齢期の食べすぎや運動不足も染色体遺伝子に記憶されます。
このように胎児期から青年期までの環境や生活習慣によって、染色体遺伝子に加えられる記憶の結果として、成人期に高血圧症や糖尿病などの生活習慣病が発症すると考えられるようになりました。
環境や生活習慣によって遺伝子を後天的に加えられる記憶システムについての学問を後天的遺伝学「エピジェネティクス」といいます。
塩基配列の学問(ジェネティクス)と対比される学問領域として現在注目されています。
遺伝子の塩基配列がすべてを先天的に決めるのではなく、自分の生活環境や生活習慣が後天的に自分の細胞の遺伝子の発現状況を変化させることでその後の健康状態が変わるという考え方です。